アメリカ海軍の海軍戦略の変質と未来

海軍の任務は敵艦隊撃破だから、洋上(ブルー・ウォーター)が作戦域でした。ですがアメリカ海軍は、1998年から沿海域(ブラウン・ウォーター)の活動を重視するようになりました。

これは国家間の戦争が可能性として低くなり、代わりに海上テロや海賊行為が増加したことが原因です。アメリカ海軍は国際情勢の変化に合わせ、海岸に近い沿海域で作戦する沿海域戦闘艦を構想します。

沿海域戦闘艦は本国アメリカから世界各地の紛争地帯まで移動できる能力と、現地の海岸近くで作戦出来る敏捷さが求められました。しかも機雷の様な安い海上テロに対抗し、沿海域戦闘艦は既存艦よりも安いことが求められました。価格が安いと言ってもネットワーク戦を重視し、しかもパッケージ交換で多様な任務に対応することが求められました。

この構想は実現し、LCS-1フリーダムとLCS-2インディペンデンスが建造されました。

沿海域戦闘艦構想は正しいのか?

私見では間違っていると断言できます。

海軍の敵は敵海軍であり、海軍の任務は敵艦隊撃破です。海上テロや海賊対策は現地の治安機関の任務であり、海上治安活動は海軍の任務外です。

海軍の任務   :敵艦隊の撃破
沿岸警備隊の任務:海上治安活動

アメリカ海軍は任務が違うにも関わらず、海軍に海上治安活動の任務を付加しました。この段階で、アメリカ海軍の海軍戦略は変質したと言えます。

アメリカ陸軍も同様の間違いをしています。陸軍の任務は敵陸軍の撃破です。ですがアメリカ陸軍は、イラク戦後は現地の対テロ・対ゲリラ戦の任務を与えました。これは治安維持活動だから、現地治安機関の任務なのです。

アメリカ陸軍は任務外の治安維持を行ったことで、装備・訓練が対応できませんでした。これが原因でアメリカ軍は被害を増大させています。アメリカ陸軍は損害回避を目的とし、装備・訓練を治安維持に適したものに変えていきました。

アメリカ軍は、「技術の問題は技術で解決する、運用の問題は運用で解決する」基本を忘れています。だから運用の問題を技術で解決しようとしているのです。戦争史を見れば、基本を忘れると軍隊が敗北するか弱体化します。

アメリカ海軍と陸軍は、敵軍と戦う能力を低下させました。アメリカ海軍の沿海域戦闘艦では敵艦隊との戦闘では使えず、敗北するか逃げるしかありません。

これにはイギリス海軍の前例が有ります。イギリス海軍が世界の海を支配すると、植民地経営が優先事項になりました。イギリス海軍の敵は敵艦隊ではなく、植民地の反乱対策が任務となりました。

イギリス海軍は植民地に植民地防衛隊を配置し、現地で反乱が発生すれば植民地防衛隊が持久します。本国のイギリス海軍は、現地からの救援要請を受けて本国から現地に艦隊を派遣する方針に変えました。

これでイギリス海軍の求める戦艦は変質します。

本国から現地まで高速で移動する戦艦が求められ、高速だが装甲が薄い戦艦が建造されました。ですが時代が変化すると、第二次世界大戦で日本海軍との戦闘で能力不足が明らかになりました。

今のアメリカ海軍も、イギリスが歩んだ誤りの道を進んでいます。ならば敵国と戦争になれば、能力不足で苦戦するか敗北します。

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